音楽は絵画や文学などの芸術と比べて、決定的にちがう部分があります。
それはお金です。絵画や文学などは大金持ちでなくてもなんとか食べていけるような生活も可能です。宮沢賢治やゴッホ、アンリ・ルソーなど慎まやかな生活を送った芸術家は多くいます。
しかしクラシック音楽はそうはいきません。音楽は演奏されなければいけません。
そしてクラシック音楽には多くの人、楽器、練習時間が必要です。この時点で多くのお金が必要になります。
どうしてもパトロンや聴衆の期待や要請に応えるような音楽が必要になるのです。とするとクラシック音楽の中には自然と時代の変化が反映されます。
本書はクラシック音楽の変化を通して、時代、社会の変化を知ることができる、そんな本です。
例えば「ベートーヴェンは知ってる、で何がすごいの?」という方は多いと思います。
そのすごさの1つが「新しいことへの挑戦」です。
それまでのクラシックは玄人向けに古いものをより洗練させることが多かったのですが、ベートーヴェンは市民が台頭する時代、資本主義、大航海時代、そんな時代にいち早く対応し、新しく分かりやすい音楽に挑戦しました。
例えばベートーヴェンの交響曲は9番までしかありません(師匠のハイドンは109番まであります)。
しかしこれも一曲ごとに新しく完成度の高いものを作ろうとしたためなのです。
他にも例えば第1次世界大戦前の音楽に見られる超人思想にも触れられています。
この超人思想と『ホモ・デウス』で語られる人類のアップデートの流れは繋がってるんじゃないかと想像するとわくわくしますね。
こうした繋がりを考えるのも、歴史を学ぶおもしろさかなと思います。
おすすめの一冊です。
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