空気に抗うにはお暇が必要である(『凪のお暇』)

内容紹介

場の空気を読みすぎて、他人にあわせて無理した結果、過呼吸で倒れた大島凪、28歳。仕事もやめて引っ越して、彼氏からも逃げ出したけど…。元手100万、人生リセットコメディ!!

空気を読みすぎて、過呼吸倒れてしまったOL、大島凪が東京郊外のアパートから再起動しようとする話です。

この作者さんは嫌な人の描き方うまいんですよね。

こう、遠慮とか優しさみたいな「空気」でカモフラージュされた棍棒で腹をゴンゴンつついてくるような、そんないやな感じをうまく出してきます。

しかもカモフラージュは「空気」ですから、ほぼ丸見えです。

そんな「空気」にやられた凪ですが、人生再起動の後は、心の中で、時には声に出して反論します。

でも、凪の反論はよくブーメランで自分に刺さるのです。

浅ましいのは私もです…

嫌な奴の中に見えたものは、自分の中にもありました。


でも、ここで終わらず、凪がなんとか乗り越えていく過程、この漫画がおもしろいのは、そこだと思います。

凪に共感できるところが多々あるのです。

(凪の節約ライフとかもおもしろいですが)

誰しも多かれ少なかれ、周りの空気に苦しまされたことがあると思います。

職場の空気、SNSの雰囲気、家族の縛り

そんな空気から逃れる方法のひとつがお暇なのです。自分を苦しめる空気との間に隔たりを作って、距離を取ることができます。

下のリンクでは、沈黙が空気の支配に抗う1つの方法として書かれています。

沈黙により、空気から少しでも距離をとることができるのです。

場の「空気」に支配されないためには「黙り方」こそが重要だ(荒木 優太)

「お約束」を問い直す方法 日本人は場の「空気」に支配されがちだと言われる。ハイコンテクストなお約束にがんじがらめにされた状況を打破するために必要なのは、他人を黙らせる強い意見…かと思いきや…

そういった意味では「お暇」も「沈黙」の一種と言えるかもしれません。

凪は空気と間を取るために、環境を一変させました。

環境を変えただけでは変わらないかもしれません。でも変えなければ分からないこともあります。

凪が少しずつでも変わっていくのを、見ていきたくなる、そんな本です。