内容紹介
新シリーズ『数学ガールの秘密ノート』の第一作です。「僕」と三人の少女(ミルカさん、テトラちゃん、ユーリ)が、家と学校で、楽しい数学トークを繰り広げます。中学・高校レベルの数学が中心ですが、やさしい数学の中にも思いがけない発見があります。各章の最後に掲載した「問題」を解くことで、読者は自分の理解を確認し、実力を高めることができます。
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この本はタイトルにある通り式やグラフについて、会話形式で分かりやすく説明してます。
そして、内容も純粋に面白かったのですが、私は作者の結城先生はこの本を通して現実の問題を解くためには何が大切なのかについて伝えたいのではないかなと感じました。
この本の中で数学を使って問題を解くとは、以下のプロセスであると説明しています。
(1)<現実の世界>から<数学の世界>に問題を移す
(2)<数学の世界>で問題を解き、解答を得る
(3)<数学の世界>から現実の世界に解答を移す
これを自分なりに現実の問題解決に応用すると、問題を解くためには以下のプロセスが必要になります。
1.現実の世界の問題を解釈して、問いを設定する
2.解釈した問題を解く、もしくは解く方法を見つける
3.答えを現実に反映させる、実行する
つまり現実の世界の問題を解決するためには、その問題を自分なりに解釈しなければいけないのです。
そして解釈した問題を解いて、実際に実行しなければ問題は解決できません。
作者の結城先生はこれらの「問題を解決するためのプロセス」を数学を通して伝えたかったのだと思いました。
各章の最初と最後に問題解決者(プロブレム・ソルヴァ)についての挿入があるのはそういうことだと思うのです。
またタイトルにある式とグラフの関係は、式でグラフを表現したり、グラフを式で表現するといったように式の世界とグラフの世界を行き来できるものです。
いわば問題解決プロセスで<現実の世界>と<数学の世界>を行き来することの縮小版であるとも考えられます。
こうした世界間を行き来することは、同じく結城先生が書いた『プログラマの数学』にも通じるものがありますね。
秘密ノートは数学の内容的には中高生向けの本です。逆に言えば中高生でも読みやすい本です。
数学や問題解決の本質を、このように間接的にでも読んで理解できる本はとても貴重だと感じます。
特に子どもたちが生きるこれからの時代は、AIが仕事を代替していくことが多くなるでしょう。
仕事が奪われると表現したニュースもよく目にします。
しかしAIにできない仕事のひとつに「問題設定」があります。問題を設定することです。AIがひとりで勝手に問題を設定することはできません。
AIは、問いを投げかける力を持たない。計算はできるが問題や式をつくれない電卓に似ている。
Harvard Business Review 「人工知能」
問題を解決する方針や、そのためのパラメータなどはこちらが設定してやる必要があるのです。
こうした問題を設定し、解決する方針を決めることは人間の仕事として残るでしょう。
だからこそ、問題解決の本質を知っておくことは重要なはずです。
子供が大きくなったら、文系理系問わず読ませてあげたい一冊。
もちろん大人でも楽しめる一冊です。