「神経質」な、あなたに(『森田療法(講談社新書)』)

神経症という言葉をご存知でしようか?

例えば人前での緊張に耐えられなくなり、人前に出たり、会議に参加したりすることができなくなる。

あるいは鍵やガスの元栓を閉め忘れたか不安で、外に出られなくなる

こうした緊張や、不安により、日常生活に支障が出てしまうようなものを神経症と呼びます、もちろん他にも様々な症状があります。

緊張や不安のようなネガティブな感情は、誰もが持っているものです。ある意味では、誰もが神経症になってもおかしくはありません。

ですから、「なぜ神経症になるのか?」、「その治療にはどのような方法があるのか?」を知っておくことは、必要ではないかもしれないけど、重要なことだと思います。

この神経症の理由のひとつが、「精神交互作用」です。

例えば、緊張すると、心臓がドキドキする、手汗をかくといった症状が出ます。

こうしたとき、緊張しないようにしよう、緊張しないようにしよう、と考えると、逆に緊張していることに注意を向けてしまい、余計緊張します。

緊張が増せば、余計に心臓がドキドキします。それを受けて、さらに緊張しないようにしようと考えれば、より緊張に注意を向けてしまうのです。

「ゾウのことを考えないでください」と言われたら、逆にゾウのことを考えてしまいますよね。

こうした悪循環を重ねることで、最終的に神経症となります。

では、神経症の治療にはどうすれば良いのか?

それには、まず不安や緊張などのネガティブな感情を持つのは当たり前であることということを受け入れることです。

そして、そうした感情を受け入れた上で、目的に沿って行動できるようにします。

例えば、緊張で声が震えてしまうのが嫌で、人前で全く言葉が出なくなってしまう症状が出たとしましょう。

この時、緊張するのは当たり前です。緊張を取り除こうとするのではなく、受け入れます。

そして、自分のやりたいことは、人前で立ち尽くすことではなく、伝えたいことがあるからだという目的に立ち返り、少しでもその目的に沿って行動できるようにするのです。

例え、緊張で声が震えても、人はそんなに気にしません。

そして、自分が感情を受け入れて行動できたことを、日記に残します。行動できた記録が積み重なれば、自分は緊張や不安と言った感情とうまく付き合っていけていると実感できます。

そうした実感が、神経症の治癒につながります。

ネガティブな感情に注意を向けるのではなく、ネガティブな感情ともうまく付き合えた事実に注意を向けるのです。

人はある意味、注意を向けたものしか見えません。

注意の配分を見直すことは、自分自身を見直すことにもなるでしょう。


森田療法 (講談社現代新書)